外国人労働者の受け入れ制度。技能実習?特定技能?
【目次】
①外国人労働者の日本での増加数、建設業での増加数
②外国人労働者の受け入れ各種制度の解説
③それぞれの在留資格と日本に滞在できる年数
④中小企業の今
⑤日本人職人と外国人労働者はどうなっていく?
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栃木県那須塩原市で即戦力となる職人を育成する「職人道場」です。未経験の職人の方や多能工を目指す方に、考え抜かれたカリキュラム、研修の場を提供しています。
建設業では外国人技能実習制度や、少し前からは特定技能ビザなどを活用した外国人労働者の受け入れが活発になっています。(外国人技能実習制度は本来労働目的ではありませんが。)情報が錯綜する中、建設業の中小企業ではどのような外国人労働者の受け入れ制度を利用し、人材の確保がなされているのでしょうか。
建設業界での外国人労働者の受け入れ推移などを見ながら解説していきます。
①外国人労働者の日本での増加数、建設業での増加数
厚生労働省の資料を参考にデータを見てみます。
(「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和元年 10 月末現在))
2019年10月末の「外国人雇用状況」の届け出状況をまとめた資料を覗いてみると、全業界で外国人労働者を雇用している事業所、そして外国人労働者数そのものが増加しています。2018年と比較して2万6,260箇所の事業所が増加、19万8,341人の外国人労働者が増加しました。この数値は過去最高です。
建設業では外国人労働者を雇用している事業所の数は2万5,991箇所。これは2018年と比較して1.3%増加し、人数では9万3,214人の外国人労働者が働いています。
国籍別に見ると
・中国 25.2%
・ベトナム 24.2%
・フィリピン 10.8%
・ブラジル 8.2%
といった順になっています。
どういった在留資格で労働を行っているのか、資格別に見ると
・身分に基づく在留資格 32.1%
(永住者、日本人の配偶者がいるなど)
・技能実習 23.1%
・資格外活動 22.5%
(留学などで来ている学生のアルバイトを認める資格)
・専門的・技術的分野の在留資格 19.8%
(医療分野や研究教育、ビジネス分野の専門的な人材、特定技能も含まれます)
②外国人労働者の受け入れ各種制度の解説
・技能実習生
技能実習の目的は、母国では習得や熟達を図ることが難しい技術を、日本で報酬を受けながら研修し出身国に持って帰るための制度です。在留期間は最長で5年。
また2020年1月から建設関係職種における技能実習を行わせる体制の基準がアップデートされました。
・申請者が建設業法第三条の許可を受けていること
・申請者が建設キャリアアップシステムに登録していること
・技能実習生を建設キャリアアップシステムに登録すること
計画申請時にはこれらが満たされている必要があります。そのため2019年年末には建設業許可の駆け込み申請についてよく耳にしました。
さらに技能実習生の就労意欲の低下を防ぎ、報酬面でのミスマッチを引き起こさないために報酬の支払いも月給制であることが求められます。
そして受け入れる技能実習生の人数の制限も変わりました。自社の社員数以上に技能実習生を受け入れることはできません。(受け入れている技能実習生の総人数が社員数を上回ってはならない)
・特定技能
特定技能という在留資格は1号と2号にわかれ、それぞれ指定された特定産業分野にて外国人の雇用が可能です。これまでの、専門分野の人材に認められた「技能」とは異なり、単純作業も可能です。外国人労働者の受け入れ制度の中でも注目を集めるこの特定技能ビザは、熟達した技術を習得し「特定技能2号」になると家族を連れてくることもできるようになります。
2019年の4月から施行され、建設業でも外国人技能実習生からの在留資格切り替えが徐々に聞かれるようになってきています。技能実習で仕事を覚えた人材を、そのまま雇用することができるのです。申請には会社の受け入れ体制や計画がしっかりなされているか、そもそもの社内規定などはきちんと整っているかが厳しくチェックされます。
また、給与も日本人と同等額かそれ以上でなければなりません。
・資格外活動
日本に留学で来ている学生などは原則として就労は禁止されていますが、資格外活動の許可を受ければ決められた時間内で可能になります。週に28時間以内であれば建設業でも働くことが可能です。
・技能ビザ
医療や研修・教育、芸術、スポーツ指導者、建築技術者など、専門分野の知識と実務経験を持った人材に認められる在留資格です。単純労働は認められていませんので、技能ビザ
・身分又は地位に基づく在留資格
永住者や日本人の配偶者、定住者など活動に制限のない在留資格を持っている方。在留期間に制限がないまたは一定期間の居住が認められている在留資格です。就労に制限はなく、単純労働でも就労が可能です。
③それぞれの在留資格と日本に滞在できる年数
・技能実習生
日本語の試験などを受けながら技能実習1号から3号まで変化していきますが、3号まで在留した場合最長5年間の就労が可能です。それ以降の就労を継続する場合は特定技能1号への切り替えが必要です。
尚、第3号技能実習の開始前、または開始後1年以内に1ヶ月以上1年未満の一時帰国が技能実習計画の認定基準となっています。
・特定技能
特定技能1号の在留期間は4ヶ月〜1年ごとの更新となり、最長で5年間の在留が認められています。建設業と造船・舶用工業では特定技能2号での受け入れも可能です。
「技能実習制度は労働力の調整手段として行われてはならない」とされていますが、特定技能ビザは「外国人労働者」としての在留資格になります。
特定技能2号では在留期間に制限は無く家族の帯同も出来るようになります。
・資格外活動
日本に留学する外国人留学生は3ヶ月〜4年3ヶ月で在留期間が決定されます。その間資格外活動の許可を得た場合、週に28時間以内の就労が認められます。学校で定められた長期休業期間中は1日8時間までの就労が認められます。
・技能ビザ
技能ビザの在留期間は3ヶ月〜5年間で定められます。入国管理局が勤務先の企業や就労の内容によって個別に判断しています。国外にいる外国人を雇用する場合とすでに日本に滞在する外国人を雇用する場合とで申請経路が変わってきます。
国外にいる外国人を雇用する場合には一般的に企業から入国管理局に申請を出します。すでに日本に滞在している外国人を雇用する場合は外国人労働者本人が入国管理局に対し申請し許可の手続きを行います。
・身分又は地位に基づく在留資格
「永住者」「日本人の配偶者など」「永住者の配偶者」「定住者」などに分けられます。この4つの在留資格は労働、就労活動に制限はありません。しかし定住者などは在留が一定の期間に定められていますのでそれ以上になると更新が必要となります。
④中小企業の今
さて、ここからは日々全国の建設業中小企業の経営者や職人さんと説明会などで面談を行っている私たちの感じているリアルな事情をお話したいと思います。
今現在、建設業の中小企業がどのような制度を利用して外国人労働者を受け入れているか。私たちの見聞きする範囲内ではまだ技能実習制度がほとんどだと感じています。会社や経営者が上記に記載したような情報を正しく仕入れられているかが非常に大切です。特に最近では建設業でも特定技能ビザを取得しているケースが徐々に出てきています。
忙しい経営者は情報を自分で調べる時間があまりありません。どこから情報を入手するかというと外国人の監理団体ということがほとんどでしょう。しかし監理団体の中でも実は特定技能を扱える会社とそうでない会社とが分かれます。すると当然技能実習から特定技能に切り替えを実施した際にはそれまでのお客さんが移ってしまうわけですから監理団体からすると毎月得られていた管理費が失われることになります。
特定技能について聞いたところで「転職が可能になってしまう」という情報しか入ってこないというのも理解できます。よって特定技能に関する”噂”だけが先行してしまっているというのが実際のところだと感じます。
⑤日本人職人と外国人労働者はどうなっていく?
建設業で外国人労働者を受け入れる企業目線で言えば、日本語のレベルも技術レベルもそれほど必要なく、毎日社員や親方と一緒に車で現場まで一緒に行き簡単な作業ばかりを任せるのであれば「技能実習」でいいのかもしれません。
しかし日本で車の免許を取って欲しい、より日本語が喋れるようになって欲しいなど、日本人と同等の働き方を求めるのであれば特定技能ビザに切り替えるのが得策でしょう。
まだまだ特定技能への切り替えに対し、金銭的なメリット・デメリットでしか判断できていないケースが多数あるようです。企業としてどのように人材を育成していきたいのかそのプランができていないのかもしれません。
もちろんそこには外国人労働者の彼ら自身がどのように将来を描いているかも大事です。技能実習で就労し、2年で母国に帰国すると最初から決めている人もいます。自分たち企業がどうなっていきたいのか、そのための最適な外国人労働者の受け入れ制度を選択できているかが大切です。
外国人労働者と共存する日本人に求められる働き方とスキル
ただ単に「単純労働」という分野でのみ考えるのであれば、日本人の仕事はどんどん外国人労働者に取って代わられていくかもしれません。同じことが出来る日本人と外国人が並んだときに、日本人が持つアドバンテージというのは日本語が流暢に話せることです。
作業だけで考えるとどんどん抜かれていってしまう中で、日本人に求められるのはただ壁が塗れる、作業が出来るというだけではなく、「打合せが出来る」「工程が見れる」などの次のステージのスキルではないでしょうか。そういった日本人ならではの付加価値が、いま、より一層求められる時代になっています。
職人道場は二人三脚
職人道場は、外国人を受け入れている企業の研修に携わってきたこと、そして成功事例も多数見てきているというノウハウが蓄積されています。
これから外国人労働者を受け入れていきたいという企業様からのご相談や、外国人の人達と一緒に新しいビジネスモデルを構築していきたい企業様とも二人三脚で一緒になって考えていきます。
どうしたら外国人が主体的にリーダーとなってチームが作れるか、スキルを得た彼らが活躍出来るステージをどうやって会社が用意したらいいか。共に考え創り上げていきます。
日本人より下のポジションで働くことが彼ら外国人労働者の仕事の在り方では決してないと考えています。彼らが生き生きと働けて活躍して稼いでいくそんなステージをこれから一緒に創っていきましょう。
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