特定技能の取得数と外国人労働者の労働環境
栃木県那須塩原市で即戦力となる職人を育成する「職人道場」です。未経験の職人の方や多能工を目指す方に、考え抜かれたカリキュラム、研修の場を提供しています。
建設業と外国人労働者は今後より切り離せない関係となっていくことは明らかだと思います。取得が徐々に進んでいる在留資格「特定技能」は日本人社員に対するのと同様にしっかり外国人人材を育てていきたい企業からすると非常に有効な「就労者としての在留資格」です。
法務省より2019年の12月末時点での特定技能1号の在留外国人数速報値が出されているのはご存知でしょうか。昨年どれくらいの人数が特定技能ビザを取得したのでしょう。建設分野での取得人数と合わせて見ていきたいと思います。
■特定技能1号の取得数
2019年4月に新設された特定技能ですが、12月末時点では総数1,621名の外国人労働者の方々がこの在留資格を取得しました。(※速報値)
最も取得の多かった業界は飲食料品製造業分野で557名。ついで農業分野で292名。
建設分野での特定技能1号の取得数は107名、そのうちの86名がベトナム人です。特定技能1号を取得した都道府県別のエリアで見てみると、多い地域をピックアップすると
東京 14名
神奈川 13名
大阪 12名
埼玉 8名
香川 8名
千葉 6名
となっています。
業種別に見ていくと
建設機械施工 30名
鉄筋施工 22名
内装仕上げ 19名
型枠施工 16名
コンクリート圧送 12名
左官 8名
特定技能の在留資格は外国人技能実習制度と比較して申請のハードルが高く、企業の経営状態や受け入れ体制について細かな資料の提出も必須です。国内において外国人技能実習制度の普及で様々なトラブルが発生してきた現状を踏まえ、厳正な審査を通過することが求められています。
巷では特定技能ビザにまつわる噂話が先行しているように見えてしまいますが、実際にこうしてデータを見てみると既に特定技能1号の申請を終え、晴れて堂々と「就労者」という形で日本での生活をスタートさせた外国人労働者の方々が多数いることがわかります。
この特定技能の認可申請をする時点で企業には膨大な情報収集と提出物の作成業務が発生します。本気で自社の大切な人材として育てて行きたい、一緒に会社を大きくしていきたい、そういった想いを持てる外国人労働者がすでに育っている労働環境があることが言わずと伺えます。
■外国人労働者が生き生きと活躍する労働環境とは
職人道場をご利用頂いている企業様の中には、外国人技能実習制度を上手く活用し、職人の人手不足を補っている会社が多数あります。塗装会社や左官工事会社など職種は様々ですが、どの会社にも言えるのは外国人労働者の方々が生き生きと、戦力として活躍しているということです。
中には外国人労働者の採用になかなか踏み切れず、長い間人手不足との葛藤に悩んでいたというケースもあります。しかし社内で教育担当者の役割を設け、どういった流れで現場に慣れていき、基本の教育にどの程度期間を掛けるのか、そして戦力に成長させるため現場の誰に預けるのかなど全体の教育計画をしっかり立てた上で外国人技能実習生の受け入れをスタートし、チームが上手く回り始めました。
一人、二人と外国人技能実習生の人数も増えていき、これまでいた先輩職人たちの負担が軽減、非常に楽に仕事を進められるようになったそうです。手厚くサポートを受けられる実習生にも嬉しい、また先輩たちの労働環境は確実に改善されています。
建設業の作業に従事する技術者の約1/3が55歳以上になっている今、体力のある若い人手の活躍は現場でも存在感があります。親方や職長と呼ばれる方々は、現場の作業を見るだけでなく工期までに納まるか全体の管理が必要です。品物の発注や打合せが続き、沢山の現場を抱え、年配になれば意図しないミスも出してしまうかもしれない。大きなミスを起こしてしまえば自尊心が傷つき、「もう辞めよう」という思考に走ってしまいます。
若い人たちが現場を支えてくれるだけで、その負担は大きく軽減されるのです。
さて、職人道場をご利用いただく企業では外国人労働者の受け入れに際し具体的にどのような社内での取り組みをしているのでしょうか。いくつか事例をご紹介します。
■外国人技能実習生に明確な評価を
ある職人会社では、外国人技能実習生のスキルアップに対してきちんとした評価基準を設けています。母国の送り出し機関でも日本語や文化を学んでくる彼らですが、建設業の現場ですぐに使える実用的な言葉を学んでくるわけではありません。教科書に載っているようなまさに正しい日本語を勉強してやってきます。
頻繁に使う日常会話は働きながら勉強していくわけですが早朝から夕方までみっちり体力仕事をしたあとでの勉強はなかなか難しいものがあります。
しかし、日本語検定の何級に合格したらいくらの報酬アップというように明確な目標を与えることによってそのモチベーションはまるっきり変化します。
「安価な賃金で沢山働いてくれる存在」ではなく、外国人技能実習生の意思を尊重し、きちんと評価することで、勤める会社への忠誠心が育まれます。
実際にこの評価制度を取り入れて実施している職人会社では眼を見張るほどの即戦力の外国人の方々が活躍しています。
■実習生の両親へのご挨拶
また、外国人技能実習生の受け入れ時、彼らの母国に訪問する際にご両親に会いに行くという経営者の方もいらっしゃいます。日本に来るためには送り出し機関での教育を受けなければならず、家族は高い費用をかけて将来に期待し投資をするわけです。
その家族の将来を背負った技能実習生を会社で預かる者として、顔合わせをし少しでも信頼関係をつくってから受け入れる。文化が異なり言葉が通じなくてもそういった人の姿勢は伝わるのではないでしょうか。
■生活必需品のサポート
またある会社ではトイレットペーパーやお米などの日用品、食料を定期的に寮に持っていくそうです。外国人技能実習生のほとんどが働いた分の報酬を母国の家族に仕送りしています。
日々の生活も出費は最小限に抑え、日本人からするとやり過ぎなくらいの節約ぶりかもしれません。毎食の食事も基本的に自分たちで用意するわけですが、日本のブランド米などの差し入れは非常に喜ばれるそうです。こういった会社の細かな心遣いも本人たちのモチベーションに結びつくのかもしれません。
またその他にも
・専用寮の借り上げ
・スマートフォンの支給
・高速インターネットの完備
など様々取り組んでいる企業があります。
■職人道場はみんなの研修所、全国の建設業界のアイディアが豊富
職人道場をご利用いただいているのは全国のアンテナ感度の高い職人会社様です。より良い労働環境をつくり、若い世代の職人の採用や育成を行うためには何ができるのかを考え実践されている企業ばかりです。ご紹介したような、外国人労働者、外国人技能実習生への積極的な関わり方などそういったアイディアが豊富に蓄積されていきます。
様々なタイプの職人会社様がこの研修施設を利用していただくことによって、建設業界の動向がいち早く掴めることはもちろん、各業種、各方面からの鋭いアドバイスによって研修自体の精度も向上し続けます。
職人道場はそのようなご利用いただく企業様と「みんなで創る研修所」であり、これからの業界を考えたときに必要とされる情報を届けるハブの役割を担っていると考えています。
今、建設業の中小企業の中で何が起きているのか、これから先の未来を私たちはどう生き残っていくのか、詳しいお話は説明会でお伝えしています。最近ではオンラインでも同時開催し、地方の企業様がご自宅や事務所にいながらご参加出来る仕組みをとっています。
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