研修所を始めてからの気づき
「もう新人入れないでください!」20人が一気に辞めて見つめ直す、教育とは。
栃木県那須塩原市で建設会社様向けに、即戦力となる職人を育成する場を提供している職人道場です。
未経験の方や多能工を目指す方に、幅広い業種の人材育成に特化した研修場を提供しています!
職人道場は自社の新人教育制度として求人や会社のホームページなどにも掲載することができます。
職人道場代表である小山に取材したインタビュー連載記事です。
初回のインタビューでは、「即戦力職人の育成」を始めるきっかけについて聞きました。
自社での職人育成への取り組みは、社内でどのように捉えられるのでしょうか。周囲は賛成だったのか。
今回は研修所を始めてから、小山が何を感じたのかを追いかけて行きたいと思います。
■最初は誰も教育に関心を示さなかった。
インタビュアー(以下:イ):根底の話なのですが、メガステップ(職人道場の運営会社であり左官・防水工事が主)の社内では新人を育成することに誰もが賛成だったのですか?
小山:いえ、自社で研修を始めた当初、ほとんど全員が嫌がっていました。
新人が入ってもすぐに辞める光景を多くの社員が見てきたからだと思います。
例えば、仕事を覚えてきた人がリーダーに任命され、その人は仕事ができたからリーダーになるわけなのですが、今思えばそれ以降のことは全部任せっきりでした。
新人に対しても「俺がここまでやったから、次ここまでやれ」という人の使い方になっていって、できずに認めてもらえない人はどんどん辞めていきました。「上司と部下なんだから言うことを聞け」というような人間関係でリーダーシップをとって、現場は人数で振り分けられるので、仕事ができる人と現場に行けば早く帰れるし、できない人と行けば残業になる。だからできるように一生懸命教えたら、今度はその人は辞めてしまう。
それで、40人が1ヶ月で20人になりました。
私自身が社長として、人と関わらなくても回る組織を作ろうと思っていたのです。なので全てをリーダーに投げていたんです。そしたら「教えてもすぐに辞めるから、もう新人を入れないでください」と言われました。
そこで私自身の考えを改め、研修のやり方や仕組みを変え、徐々にカタチができていったという経緯です。なのでメガステップという会社の中で、職人を育てるための教育方法については15年以上(?)試行錯誤を繰り返してきたんです。それにさらに磨きをかけて作られたのが職人道場のカリキュラムです。
イ:リーダーが「新人を入れないでほしい」と言ったとき、どのように仕組みを変えていったのですか?
小山:リーダーの負担にならないように育成をすべきだと思いました。リーダーがラクになるように。それからは職人さんが入社したらすぐに研修所に行ってもらって、新人がある程度戦力へと成長してから班に入れることにしました。
■建設会社における、新人教育の役割
イ:新人教育をしていないという建設会社さんもいっぱいあると思いますが、新人育成はこれからの業界にとってどういう役割を果たしていくのでしょうか?
小山:やっぱり先輩について現場に行くというのが当たり前の世界ですからね。教えてもらう、ということがないんです。もしかしたら社長が新人と現場にずっと一緒に入れるのであればそれがベストかもしれません。
でも必ず誰かに任せる時が来る。そうすると矛盾が生まれてきて、「新人を育てたい」と思っていても「今日はここまで終わらせないといけない」というジレンマがあり、また「新人を残業させるのはかわいそうだ」という意見や感情も入ってきます。
色んな事情が絡んでくると、結局新人には「今できることを現場でさせる」ということになってしまう。掃除しかできなかったら掃除になってしまうんですね。
よっぽど余裕があれば技術を教えると思いますが、それが毎日あるわけではありません。たまに教えてもらって1ヶ月空いて、というペースで1年や2年経っても人が育つわけがないんです。教える側の費用もかかるので「今日はこれを教えて、あれを教えて、明日はこれで」と繰り返す場所がないんです。
イ:なるほど。新しく職人さんが入っても、従来の業界に根付いたやり方だと育たないということですね。
小山:そうです。大して教わってもないのに親方から「前に教えただろう」と言われても自分のものになっていないからできません。親方は親方で、1回言っているから、ついできるだろうと考えてしまいがちです。すると「ミスをすると怒られる」という悪循環です。
誰だって毎日怒られるために仕事に行くわけではありませんよね?それで新人が嫌になって会社を辞めるんです。
イ:互いにフラストレーションのぶつかり合いのようになりますよね。
すると逆に言えば新人教育というのは、即戦力の職人さんを育てるだけではなく、「離職率の低下」にも影響してくるということですね!!
次回はここから「職人道場」として建設業界の教育サービスになっていくまでを聞いていきたいと思います。